「一年以上、帰国できていない。」
「日本の家族と直接会いたい。オンラインで顔を見るだけでは、かえって寂しい。」
「日本企業の競争力が低下していることを、日本本社は分かってくれない。」
新型コロナウイルスの入出国制限が続く中国で、帰国できない日本人駐在員たちから聞く言葉です。
「海外で駐在員をしている」と言うと、周りからは華やかな仕事をしているように思われるかもしれません。
しかし、実際は、慣れない中国での業務に大きなストレスを感じながら、なんとか仕事をこなしている方も多くいらっしゃるかと思います。
加えて、コロナ禍によって、中国の駐在員たちはこれまでにない環境に身を置くことになりました。
日本との時差はたった1時間、数時間のフライトで気軽に渡航できた中国は、コロナ禍により渡航しづらくなってしまいました。
これは、ビザが取りづらくなっただけでなく、入国直後に2週間以上の厳格な隔離生活が必要なこと(2022年3月現在)が理由として挙げられます。
中国では、オフィスビルや居住アパートで感染者が出たときには、建物全体が緊急封鎖され、一切外に出られなくなることもあります。「ゼロコロナ政策」と言われる、日本とは全く異なる厳格な感染対策が行われているのです。
日本本社の上司や同僚も、定期的に中国に出張をして駐在員の顔を見ながら仕事の状況やストレスの様子を確認したり、夕食で酒を飲みながら悩みを聞いたりしてストレスを発散してあげる、ということができなくなってしまいました。
このような環境の中、中国の駐在員たちはどのようなストレスを抱えているのでしょうか。
本稿では、中国の駐在員のストレスについて、コロナ禍による影響を含めて解説していきます。また、ストレスを深刻化させないためにできることを紹介します。
本稿が、中国での駐在生活の一助になりましたら幸いです。
目次
1. 中国駐在員が注意すべきストレス
日本のビジネスパーソンは、立場や役割によって多くのストレスにさらされています。さらに駐在員になると「海外で暮らす・働く」というストレスが追加され、人によっては心身に悪影響を及ぼすことがあります。
筆者は10年間以上、A&Cアソシエイツ株式会社として中国に法人を持ち、中国の日系企業における教育・研修プログラムの企画・運営や、日本企業の中国進出支援を行ってきました。その経験から、中国駐在員が赴任期間を全うするには、駐在員が抱えるストレスやその対処法を把握しておく必要があると感じています。
この章では、中国駐在員のストレスと、それらが深刻化した時の症状について解説します。
1-1. 中国駐在員がストレスを感じやすい業務
中国駐在員がストレスを感じやすい業務には以下のものがあります。
・中国人部下のマネジメント
・日本本社との関係性
・社内の日本人駐在員同士の人間関係
・日本からの出張者サポート
・中国人管理職とのコミュニケーション
それぞれを詳しく解説します。
・中国人部下のマネジメント
これは駐在員が職場で最初に経験するストレスになるでしょう。特に、日本で管理職の経験が無いまま赴任すると、担当組織の責任を持つというマネジメントそのものが初体験となるためです。
ましてやそのマネジメントの相手が自分と異なる言葉や考え方を持つ中国人となると、日本で経験してきた自分自身の成長過程が適用できるとは限らず、どうして良いか分からなくなることもあります。懸命に中国人部下のことを知ろうとしても、日本語の堪能な部下でない限りは通訳を介していても意思疎通が困難です。
また、中国人には「悪いことは報告しない」「ミスやトラブルは、自分が悪く思われないようにアレンジして報告する」という傾向もあります。これは、「悪いことこそ早く報告を」「問題解決のために事実を正確に報告する」という教育を受けている日本人からすると大きなストレスになるでしょう。
ただ、このようなストレスがあることを事前に覚悟の上で赴任している場合は、本社や先輩の駐在員の支援を得やすいため、あまり深刻化することはありません。
本社の人事担当者と定期的なオンライン面談で悩みを聞いてもらうことでストレスを軽減したり、先輩駐在員に具体的な助言を仰いだりすることができるからです。
また、最近では中国人社員に対して外部研修などの費用をかけて育成している企業も多く、中国人社員たちが一定の知識やスキルを保有するようになってきました。
そのような企業の中国人社員たちは成長意欲が高いことが多く、駐在員が自らの得意分野や専門性を発揮することができれば、彼らから「この新しい日本人駐在員からは学ぶことがある。自分の成長や評価を高めるために有益な人だ」と、「尊敬できる人」という評価を得ることができ、徐々に中国人社員たちと良好な関係を築ける可能性が高くなります。
ただ、日本人駐在員の専門分野であっても、知らないことや分からないことがあると思います。そのような時、知ったかぶりやごまかす態度は厳禁です。
そのような態度を中国人はすぐに見抜き、「尊敬できない人、指示に従う必要の無い人」と判断されてしまいます。知らないことや分からないことは素直に認め、中国人部下たちと一緒に調べたり考えたりしてください。「一緒に」取り組むことで、一体感を醸成するきっかけにもなります。
・日本本社との関係
時として、日本本社が大きなストレス要因になることもあります。
駐在員同士で会食をしながら、日本本社に対する愚痴をこぼす時に「敵は本社」と表現することがあります。
これには、仕事を進める上では、現地中国人社員たちは味方であり、日本本社は妨げになる敵である、という意味が込められています。
例えば、「日本本社の決裁に時間がかかるので、ビジネスチャンスを逃してしまった」というのは、よく聞く話です。
決裁が遅いばかりに、業務提携や店舗物件の賃貸契約、人材採用などで、何事も「即決」する中国企業に、ビジネスチャンスを奪われてしまうことがあります。
また、日本本社が中国の商習慣を理解してくれず、現地に則した対応ができない、ということもあります。
例えば、公安や労働局などからこじつけのような罰金を課せられた時は、中国では減額交渉して一定額を支払えばすぐに解決することが一般的です。しかし、日本本社からの指示で拒否や抵抗をし続けると、さらに追加の指摘をされてしまい、一定期間の営業停止など、事態が悪化することもあります。
日本本社は、ガバナンスやコンプライアンスの点からは正しい対応をしているのですが、結果的に現地法人へのダメージを深刻化させてしまうのです。
その他、コロナ禍により日本での業績確保が難しくなっている業界では、中国での売り上げ確保や事業拡大に過度の期待をすることがあり、「日本の売り上げ不足分を中国で確保して欲しい」と中国法人への要求が強くなることもあります。
確かにコロナ禍の日本よりは、中国の経済活動は再開しつつあります。しかし、欧米企業も中国での投資を活発化させている上、高品質の製品を作る中国企業も多く台頭しています。中国国内での企業競争は、コロナ禍前よりも厳しくなっており、中国国内の売り上げを増やすのは簡単ではありません。
厳しい競争の中で、企業売り上げを伸ばすようにという日本からの強い要求は、業務における最大のストレスになり得ることもあります。
・社内の日本人駐在員同士の人間関係
コロナ禍を経て、元々職場の人間関係が良かったところはさらに良くなり、あまり良くなかったところはさらに悪くなってしまったように感じます。
コロナ禍以前から良い人間関係が構築できていた職場では、「コロナ禍で日本への往来が簡単ではなくなったので、お互い協力して頑張ろう」とより助け合うようになっています。
一方、良い人間関係が構築できていない職場では、日本への往来がしづらくなったことによるストレスや、駐在員が減ったことで起きた業務の増加からくるストレスを、従業員同士でぶつけ合ってしまうことがあります。その結果、人間関係が悪化してしまうのです。
人間関係が悪化した組織の中では、部下の一人がメンタル不調を発症し、そのフォローに苦慮していた駐在員も続けてメンタル不調を発症させてしまう、というような事例も見受けられます。
・日本からの出張者サポート
日本本社から出張者が来ると、会食をセッティングしたりKTVといわれるカラオケ店に案内したりすることがあります。駐在員のなかには、これが大きなストレスだったという人もいます。
出張者は、出張者自身が楽しみながら同時に駐在員のストレスも発散できると思っていますが、駐在員からすると「出張者が行きたがるから仕方なく行く」ということが多かったようです。
コロナ禍では、日中間の往来が困難になったため、日本からの出張者が少なくなりました。しかし、アフターコロナのことも視野に入れて、この種のストレスも存在するということを念頭に置いておきましょう。
・中国人管理職とのコミュニケーション
赴任時の役職によっては、中国人管理職者が同等クラスになったり、上司になったりすることがあります。日本人としか仕事をしたことが無い駐在員の場合、中国人が自分と同等以上の役職で仕事をするということをストレスに感じることもあるようです。
日系企業の中国人管理職は、「日本への留学や社会人経験がある」「日本語が堪能」「日本人の性質を理解している」という人が登用される傾向があります。
彼らは日系企業で評価される仕事の仕方や立ち居振る舞いを理解し、マネジメントに関する基礎的な見識も持っています。そのため、駐在員が彼らに敬意を持って接すれば、良好な関係を築くことは難しくありません。
彼らと良好な関係を築くことができれば、中国人部下のマネジメントをサポートし、駐在員のストレスを軽減してくれることがあります。
1-2. 中国駐在員の日常生活におけるストレス
中国駐在員が日常生活でストレスを感じる要因には以下のものがあります。
・生活環境の不備
・食事が口に合わない
・文化、国民性が合わない
・帯同家族によるストレス
それぞれを詳しく解説していきます。
・生活環境の不備
居住するマンションなど、生活環境に不備があるとストレスの原因になります。
電子カードキーを備えたきれいなマンションであっても、カードキーが壊れて部屋に入れないということがあり得ます。また、雨漏りや水漏れ、停電、水道水が濁る、断水、騒音などのトラブルは珍しくありません。
自宅で心身をストレスから開放できないことで、不眠や食欲不振などを引き起こす可能性もあります。生活環境の不備は深刻な問題となります。
・食事が口に合わない
上海などの都市部では、リーズナブルな居酒屋でも日本人が美味しく食事を楽しめる店が多くあります。
客単価600元(約1万円)の高級寿司店などに行けば、長崎や北陸から直送された新鮮な魚を楽しむことさえ可能です。
日本料理以外にも、韓国やイタリア、スペイン、ドイツなど各国の料理店が豊富あるため、食事に関して困ることはあまりありません。
一方、地方都市や郊外の大規模工場団地近辺では、日本人が満足できるような飲食店はあまりありません。居酒屋などの日本料理店があっても、調理人が中国人や台湾人であることが多く、料理の味付けが日本人に合わないこともあります。
食事が口に合わないのは深刻なストレスとなるため、自炊などの対応が必要となるでしょう。
・文化、国民性が合わない
列に並ばない、会話の声がうるさいというような実害の少ないことから、歩道で電動バイクにぶつかられる、タクシーで遠回りされる、スリに遭うなど損害が生じることもあります。
これらは、自らの注意で遭遇する確率を多少は減らせるものの、ゼロにすることはできません。ストレスをためないためには、現地の環境と文化に慣れることが重要です。
・帯同家族によるストレス
帯同家族がいると帰宅後に「癒やしの時間」を持つことができるので、駐在員のストレスが軽減される、と思うかもしれません。しかし、場合によっては帯同家族の存在自体がストレスの原因になってしまう、ということもあり得ます。
なぜなら、帯同家族が中国での生活でストレスを蓄積することが多いからです。駐在員は、帰宅後に家族のストレスも受け止め、解決する役割を負わなくてはなりません。それにより、駐在員自身もストレスを抱えてしまうのです。
海外駐在員のメンタルヘルスサポートをしている会社の方からは、「コロナ前、メンタルヘルス不調を発症させた駐在員の約7割が家族帯同者だった」と聞いたことがあります。
ただし現在は、コロナ禍により多くの帯同家族が帰国し、ほとんどが単身での駐在となっているため、この種のストレスは少ないようです。
赴任に家族を帯同する予定であれば、自分だけでなく家族のメンバーが海外生活に伴うストレスをなるべくためずに済むように、準備をしておくと良いでしょう。(2章の「ストレスのセルフケア」を参考にしてください。)
1-3. こんな症状があれば、原因はストレスかも
「たまに発生する大きなストレス」よりも、「多頻度で遭遇する小さなストレス」の方が心身への悪影響を及ぼし、メンタル不調を引き起こす確率が高くなります。
ストレスで生じるメンタル不調の症状には、以下のようなものがあります。
・身体症状
・心理症状
・行動症状
図)メンタル不調の詳細
身体症状には、頭痛やめまい、下痢や腹痛などの胃腸の不調などが含まれます。この場合、「中国の水や食材が体に合わないのだろう」と判断してしまい、市販の胃腸薬などで対応してしまいがちです。完治すれば良いのですが、症状が回復せず継続する場合には、注意が必要です。
身体症状以外にも「だるさが続く」「元気が無い」「やる気が起きない」「考えがまとまらない」などの心理症状が続く場合もあります。
さらに、欠勤や遅刻、同じミスを繰り返すなどの行動症状に至ることもあります。
小さなミスであれば、「そんな時もあるか」と気に留めないかもしれませんが、普段はしないような大きなミスが続く場合は、メンタル不調の可能性があることを覚えておきましょう。
メンタル不調になってしまうと、医師など専門家の関与無しに回復することは困難です。特に心理症状が進んだ場合だと、メンタルヘルス不調を自覚したり、認めたりすることも難しくなり、診療を拒否することもあります。
メンタル不調の症状が表れている場合は、できるだけ早期に日本本社の産業医や、中国現地の提携医療機関に相談することをお勧めします。
2. 中国駐在員がストレスを深刻化させないためにすべきこと
ストレスそのものが、「悪いもの」ではありません。ストレスがあるからこそ、それを克服しようと周りの人と助け合い、挑戦し、乗り越えて達成感を得て、成長することができます。
実際に、ストレスとどのように向き合うかが重要であり、避けられないストレスがあったとしても見方を変えることでより健康的になれるという研究結果もあります[1]。
この章では、中国駐在員がストレスを深刻化させない2つの方法を解説します。
2-1. 上手に社内外の支援を受けながら、仕事で成果を出す
仕事をするために赴任しているのですから、仕事で成果を出すことが最良の方法です。成果を出せば、中国人部下や管理職たちに認められ、彼らも敬意を持って接してくれるようになります。部下への指示も通りやすくなるでしょう。
中国人は日本人以上に自分の成長やメリットにつながることに対して積極的なので、能力があると判断されれば、社員達から「自らの能力を高めたいのでもっと教えて欲しい、指導して欲しい」と頼まれることもあります。
また、仕事で成果を出し自分に自信を持つことが、多少のストレスには動じないメンタルを育てることにつながります。
もちろん、赴任後すぐに成果を出すことは容易ではありません。赴任後短期間で成果が得られるよう、工夫が必要です。ポイントは以下の2つです。
・赴任先の上司や日本本社のサポートを取り付ける
・日系コンサルティング会社を活用する
1つずつ見ていきましょう。
・赴任先の上司や日本本社のサポートを取り付ける
実務面で赴任先の上司や日本本社のサポートを得られれば、赴任後に慌てずに自分の仕事に注力することができます。
日本本社からのサポートについて例を挙げると、例えば、Zoomなどオンライン会議ツールを活用して助言を得るといった方法があります。また、分析やデザインなどの業務の一部を、日本本社の社員に代行してもらったり、技術に詳しい社員に講師を頼み、通訳を介して中国人社員に研修をしたりすることも可能です。
研修を録画し、中国語の字幕をつけて、中国法人内で繰り返し視聴できるようしている企業もあります。
社内での支援だけでなく、クライアントや仕入先にPCやタブレットを持ち込み、オンライン会議で中国現地法人同士の打ち合わせに日本本社の決裁者にも同席してもらい、素早い意思決定をすることも効果的です。
素早い意思決定ができれば、たとえ失敗したとしても、すぐに次の施策に着手することができ、成果を出すまでの期間を早めることができます。
・日系コンサルティング会社を活用する
中国に進出している日系コンサルティング会社を活用することも効果的です。日系ならば、コンサルティング会社の担当者と日本語で打ち合わせをして、自社の中国人社員たちに中国語で教育や研修を行ってもらうことが可能です。
研修メニューは、EXCELの使い方やロジカルシンキング、品質管理やマネジメントなど豊富に揃っており、中国人育成で役立つ内容になっています。
教育以外にも、人事評価制度の構築や財務管理などをアウトソーシングするコンサルティング会社もあります。これらアウトソーシングを活用すると、日本と異なる労務や財務などに関連する法的要求事項を理解するストレスを軽減できます。駐在員はよりコアな業務に専念することができ、短期間で成果を上げることにつながります。
2-2. セルフケアで解消する
海外で生活をすると、ビジネスだけでなく、さまざまなシーンでストレスを感じます。そのため、自分でストレスを解消できる術を持っていると良いでしょう。
例えば、日本人駐在員がいる都市であれば、多くの日本人コミュニティがあります。県人会や大学のOB会のように参加基準があるものから、広島カープや阪神タイガースを応援する会、ワインを楽しむ会のように、誰でも自由に参加できるものも多数あります。
日本語でコミュニケーションを取ったり、日本の食べ物やスポーツチームについて話したりすることで気持ちがスッキリします。
日本人会の一部では、駐在年数の長い日本人が仕切っていたり、勤務する会社の規模などにより上下関係が発生したりするなど、参加するとかえってストレスになる場合もあります。自分には合わないと思ったら、気軽に他の会に切り替えるのもストレスをため込まない一つの方法です。
一方、スポーツなど特定の目的のために集まるコミュニティだと、駐在年数や勤務する会社などを気にかけることは少ない上、スポーツという行為そのものが健康に良い効果をもたらしてくれます。
野球やサッカーやテニス、ヨガやダンスの他、書道や絵画、楽器やコーラスなども良いでしょう。多くの都市で日本人チームや教室を見つけることができます。
学生時代のスポーツなど過去に経験があることを再開するのも良いですし、以前から関心を持っていたようなことを始めてみるのもお勧めです。
上海などの都市部であれば、中国人師範に太極拳を、スペイン人ダンサーにフラメンコを、アメリカ人にスポーツクライミングを習うことも可能です。
新しいことを習うと、多くの気付きが得られます。習う内容そのものがストレス発散などに良いことに加え、多文化を理解できるようになり、自らの多様さの幅が広がるなどメンタル面でも良い効果が期待できます。
中国駐在員がストレスと上手に向き合うためには、ビジネスと私生活の両面でストレスに対処する方法を知っておく必要があります。
[1] TED「ストレスと友達になる方法」,https://www.ted.com/talks/kelly_mcgonigal_how_to_make_stress_your_friend/transcript?embed=true&language=ja(閲覧日:2021年8月17日)
3. まとめ
本稿では、中国駐在員のストレス事情について解説しました。
中国駐在員がストレスを感じやすい業務には以下のものがあります。
・中国人部下のマネジメント
・日本本社との関係性
・社内の日本人駐在員同士の人間関係
・日本からの出張者サポート
・中国人管理職とのコミュニケーション
駐在員が最初に経験するストレスが、中国人部下のマネジメントです。「悪いことは報告しない」など、中国人の仕事に対する傾向は日本人とは異なります。こうした文化の違いをあらかじめ知っておくことで、悩んだときは本社や先輩駐在員の支援を受けやすくなります。
また、駐在員自らの得意分野や専門性を発揮すると、中国人社員からの評価を得られ、良好な関係を築ける場合もあります。ただし、知らないことや分からないことがあれば、ごまかさずに素直に認めることが重要です。
日本本社が、現地の商習慣に理解が乏しくビジネスの妨げになることもあります。また、人間関係の悪化、日本からの出張者のサポートなどもストレスの一因となります。
中国人管理職とのコミュニケーションに悩む人もいるかもしれません。駐在員が敬意を持って接すれば、信頼関係を築くことは難しくありません。彼らのサポートを得ながらマネジメントを行えば、業務上のストレスを軽減することも可能でしょう。
中国駐在員の日常生活におけるストレスには以下のものがあります。
・生活環境の不備
・食事が口に合わない
・文化、国民性が合わない
・帯同家族によるストレス
生活環境の不備や食事が口に合わないなど、日常生活のストレスが大きくなります。これから現地に赴任する方の場合、どのような環境で生活することになるのか事前に確認しておくことが大切です。
また、中国の文化や国民性は日本とは大きく違う部分があるので、ストレスをため込まないためには中国の風土になじむことも重要です。
駐在員がストレスを深刻化させないための方法は以下の通りです。
・上手に社内外の支援を受けながら、仕事で成果を出す
・セルフケアで解消する
仕事で成果を出すと社員からも頼られる存在になり、自分にも自信を持つことができます。少しのストレスがあってもくじけずに頑張ろうという動機付けになります。
さらに日本人コミュニティへの参加や、スポーツや趣味などに取り組むことで、心身を健康に維持し、ストレス解消につなげることもできます。
コロナ禍での海外事業展開は、誰にとっても初めての体験です。中国は新型コロナウイルス感染拡大をほぼ抑え込んでいると言えますが、現地の雰囲気は日本とは大きく異なります。
中国政府は地下鉄やショッピングモールの利用者に対して、体温チェックと濃厚接触者ではないことを証明するQRコードの提示を求めています。また、オフィスビルでコロナ感染者が出た場合は、ビル全体を封鎖するなどの取り組みを行っています。
そのような環境の中国で過ごす駐在員のストレスは、コロナ禍以前よりも大きくなっています。これから駐在する予定の方は、まずは注意すべきストレスとその原因を知っておきましょう。
そして、実際に駐在をする中で、少しでも気になる症状がある場合は、無理せず適切なサポートを受けるようにしてください。
この記事をきっかけに、中国での駐在生活がよりよいものになることを願っています。