なるほど!中国赴任 準備編

中国の就労ビザを取得する方法 ご家族の分もまるっとスマート解説!

2023.9.28 更新

「中国赴任が決まり、就労ビザを取得することになったけど、ちゃんと取得できるか不安。」

「ビザ」と聞くと準備が大変で審査が厳しそう、そんなイメージを持っている方が多いかもしれません。

確かに、ビザ取得までに用意すべき書類は多く、数々の手続きを踏んだうえで審査が行われます。ですが、ビザ取得までの大まかな流れと仕組みを知れば、ビザの小難しいイメージも変わるはずです。

これから、ビザ取得に必要な書類と書類の申請方法、ビザを取得するまでの流れを解説します。併せて、赴任に伴う家族(帯同者)に必要なビザと取得方法、中国到着後のビザの取り扱い方も解説します。

※この記事は、2023年8月7日時点の情報を元に作成しています。

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1. 中国就労予定者が取得すべきは「Zビザ」

ビザ(査証)は、大使館や領事館が発行する入国許可申請証明です。ビザを発行する主目的は、自国に入国を希望する外国人の身元審査となります。

ビザ=滞在許可と思われがちですが、ビザはあくまでも入国許可申請証書であり、滞在許可証ではありません。多くの国ではビザを持って入国後、別途、居留許可証の申請が必要となります。

中国で収入を得ることができる就労ビザの名称は「Zビザ」です。Zビザは有効期限が3カ月の臨時就労ビザなので、入国後に就業許可証と居留許可の申請が必要となります。すべての申請手続きが終了した後、1年間の滞在が可能となります。

ビザ取得可能条件を下記にまとめましたので、参考にしてください。

Zビザ取得可能条件
  • 大学卒業者
  • 最低2年間の就業経験があること
  • 18歳以上、60歳以下
  • 健康上に問題がないこと
  • 犯罪歴がないこと
  • 中国での就業先が決まっていること
  • パスポートに6カ月以上の残存有効期間があること
  • 上記を満たさない場合、特定の条件を満たすこと[i]

2. ビザ申請の前に!「外国人工作許可通知」を取得

Zビザを申請するためには、まず中国政府より労働許可を得る必要があります。この「外国人工作許可通知」がビザ申請手続きに必要なります。

2-1. 「外国人工作許可通知」とは

外国人工作許可通知は、簡単に言うと中国政府から労働許可を得たという証明書です。取得の流れは以下でご説明しますが、勤務先の地域や取得する時期によって、外国人工作許可通知を取得するためのルールが異なる場合があります。取得前に最新の情報を確認するようにしてください。

2-2. 「外国人工作許可通知」取得までの流れ

外国人工作許可通知取得までの流れは下記の通りとなります。

  1. 外国人工作許可通知取得に必要な書類を集める
  2. (1) の書類を現地勤務先へ送付する
  3. 外国人工作許可通知を受け取る

流れの中でも特に時間がかかり、大変なのが、(1)の外国人工作許可通知取得に必要な書類を集めるという作業です。

(1) 外国人工作許可通知取得に必要な書類を集める

外国人工作許可申請に必要な書類は下記です。

  • パスポートのコピー
  • 卒業証明書
  • 履歴証明書
  • 派遣任命書や中国での勤務先との雇用契約書
  • 証明写真
  • 外国人体格検査記録
  • 犯罪履歴証明書

パスポートのコピー以外の書類内容と、集めるための手続き方法を解説していきます。

・卒業証明書

最終学歴の学校に発行してもらいます。日本語表記のものだけでなく、英語または中国語表記のものを用意しておくとより安心です。取得までの期間は、出身校の場所にもよりますが、約1週間程度と考えておきましょう。

・履歴書

決められたフォーマットはありませんが、できる限り英語もしくは中国語で作成すると良いでしょう。

・派遣任命書や現地勤務先との雇用契約書

勤務先から発行される辞令で、「中国で勤務することが決まっています」という証明書です。お住まいの都道府県によっては、就労ビザ取得に必要な、犯罪履歴証明書の取得にも使います。

・外国人体格検査記録

ビザ発行のためには健康診断を受ける必要があります。その健康診断の結果記録が「外国人体格検査記録」となります。

外国人体格検査に必要な健診は、全国の国公立病院・労災病院で実施しています。念のため、受診する前に外国人体格検査に対応しているか確認しましょう。東京在住の方は、日中友好病院(代々木)・国立国際医療センター(早稲田)でも受診できます。

外国人体格検査を受診する際には、中国大使館ホームページから外国人体格検査記録フォーマット用紙をダウンロード・印刷して持参する必要があります。フォーマットに記入する言語は日本語で構わないようです。

参考) 外国人体格検査記録フォーマット https://www.visaforchina.cn/CPH2_ZH/upload/Attach/mrbj/271543.pdf  

健康診断の結果を受け取るまでには約1週間かかります。なお、外国人体格検査と同時に、中国渡航に際して推奨されている予防接種を受けておくと、その後の赴任準備がスムーズに進みます。

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外国人体格検査記録には公印確認が、卒業証明書と犯罪履歴証明書(後述)には公印確認と領事認証が必要となります。

公印確認と領事認証

公印確認とは、日本国・地方公共団体・自治体などが発行する公文書が真正であると外務省が証明することです。

領事認証とは、「日本国が発行したこの公文書は真正なものである」と在日外国領事が認証することです。

公印確認→領事認証という認証手続きを踏んだ公文書をもとに、外国の政府機関はビザ発給などの入国許可を出します。 要するに、公印確認と領事認証は外国の政府機関が自国に提出された公文書の真偽を確かめるための手続きということです。

参考)外務省:証明(公印確認・アポスティーユ)・在外公館における証明
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/shomei/index.html

写真

外国人体格検査記録をはじめとして、ビザ申請書類には写真を添付するものが数多くあります。余裕を持って、赴任者本人で15枚程度、帯同者も5枚程度は写真を準備することをお勧めします。

中国ビザ申請用写真には細かい決まりがありますので、写真スタジオで撮ってもらうと安心です。

参考)中国査証申請服務中心(中国ビザ申請センター)https://www.visaforchina.cn/TYO2_JP/generalinformation/news/283395.shtml

・犯罪履歴証明書

犯罪履歴証明書とは、各都道府県警または警視庁が発行する、ビザ発給対象個人の犯罪経歴の有無を証明する公文書のことです。

犯罪履歴証明書を取得するためには、発行の目的がわかる書類が必要となります。その際に必要なのが先述した「勤務先からの派遣任命書や中国での勤務先との雇用契約書」です。

ただし、場合よっては発行の目的の証明が不十分と見なされる可能性もあるので、必ず必要な書類を事前に確認しておきましょう。多くの場合、雇用契約書や派遣任命書、勤務先からの招聘状などで証明可能のようですが、発行予定の県警によっては現地勤務先に「外国人工作許可通知申請表」を作成してもらう必要があります。

「外国人工作許可通知申請表」は、就労予定者から「外国人工作許可通知」の発行申請を受けて、現地勤務先が作成する書類です。

外国人工作許可通知は犯罪履歴証明書がないと発行されないので、ここの手続きは少々複雑です。以下のチャートをご参照ください。

図)「外国人工作許可通知」発行までの流れ(犯罪履歴証明書に工作許可通知が必要な場合)

                                                                 

このように、犯罪履歴証明書の申請に、外国人工作許可通知が必要になる場合は、手続きが複雑になります。お住まいの地域の都道府県警に、犯罪履歴証明書の発行に必要な書類を確認しておくと手続きがスムーズに進みます。

犯罪履歴証明書は取得までに2週間ほどかかります。犯罪履歴証明書を取得したら、先述した「公印確認」と「領事認証」を忘れずに受けるようにしましょう。

以上が外国人工作許可通知取得に必要な書類となります。勤務先と連携し、自身で用意すべきものをしっかりと準備しましょう。

(2) (1)の書類を現地勤務先へ送付する

全ての書類が手に入ったら、現地勤務先へ送付します。書類の送付に利用すると便利なのが「EMS(国際スピード郵便)」です。

EMSは世界120以上の国・地域へ書類や荷物を送れる郵便サービスです。中国までの書類送付にかかる期間は、3日~1週間程度です。追跡サービスもあるので、重要な書類を送付する際も安心です。

EMS送付の手順は下記ホームページを参考にしてください。

参考)日本郵便:EMS(国際スピード郵便)で送る https://www.post.japanpost.jp/int/use/ems.html

(3) 現地勤務先から「外国人工作許可通知」を受け取る

外国人工作許可通知を中国語・英語表記の両方で受け取った場合は、ビザ申請時に両方とも中国ビザ申請サービスセンターに持っていきましょう。また、PDFファイルで受け取った場合はあらかじめ印刷しておきましょう。

3. ビザ申請の手続き

外国人工作許可通知が発行されたら、いよいよビザ申請手続きに入ります。外国人工作許可通知は取得までの流れが複雑なうえに時間がかかるものですが、ビザ申請手続き自体は簡単です。

なお、申請は代行業者に依頼することも可能です。

3-1. ビザ申請に必要な書類

ビザ申請に必要な書類は以下の通りです。

  • パスポートの原本及び写し(余白が2 ページ以上あり、6カ月以上の残存有効期間があるもの)
  • 6カ月以内に撮影した証明写真 1枚 
  • 中華人民共和国査証申請表(ビザ申請書)
  • 外国人工作許可通知

ビザ申請書は、中国ビザ申請センターのホームページからオンラインで記入、プリントアウトして署名し、申請時に持参します。

申請予約も、オンラインで行います。中国査証申請服務中心のホームーページから、お住まいの管轄エリアを選択し、高速→査証を選択すると、申請に関するページが開きます。

参考) 中国査証申請服務中心(中国ビザ申請センター)のエリア選択ページ

https://www.visaforchina.cn/globle/

3-2. ビザ申請の仕方

上記の申請書類を中国ビザ申請センターに提出します。ビザ取得までにかかる日数は標準で1週間〜10日程度ですが、渡航日の1カ月前までには、ビザの申請を済ませましょう。

外国人工作通知の取得手続きにかかる時間を考慮すると、必要なすべての書類を揃えてビザ申請を行い、手元にビザが届くまでには2〜3カ月程度かかると考えておくといいでしょう。

また、中国の勤務先に行ってもらう手続き(外国人工作許可通知の申請、発行)については、遅延防止のため、こまめに進捗状況の確認を行うことをおすすめします。

4. 赴任者の家族が取得すべきビザとその申請方法

赴任者本人だけではなく、家族と共に赴任される方も多いと思います。本項では、赴任者の家族が取得すべきビザの種類とその取得方法について解説します。

4-1. 家族に必要なのはS1ビザ

駐在員に帯同する配偶者、または父母、18歳未満の子、配偶者の父母が取得すべきビザは「S1ビザ(滞在期間が180日以下の場合はS2ビザ)」です。滞在可能期間は365日間ですが、期限より前に招聘者である駐在員の就労期間が終了した際には、帰国しなければなりません。

赴任者に伴って移住する家族を、ビザ発給手続き上「帯同者」と呼びます。

4-2. S1ビザ取得に必要な書類

S1ビザ取得のために必要な書類は下記の通りです。

  • パスポートの原本及び写し(余白が2 ページ以上あり、6カ月以上の残存有効期間があるもの)
  • 6カ月以内に撮影した証明写真 1枚 
  • 中華人民共和国査証申請表(ビザ申請書)
  • 中国国内に居留する親族(赴任者本人)からの招聘状
  • 招聘者の外国人工作許可通知のコピー
  • 招聘者のパスポートと居留証のコピー 
  • 戸籍謄本(3カ月以内に発行されたもの)
  • 居留許可を申請する旨の誓約書

証明写真にはZビザと同様、細かい規則がありますので、写真スタジオでの撮影をおすすめします。また、戸籍謄本には公印確認と領事認証が必要となります。

招聘状には決まったフォーマットはありません。中国ビザ申請センターのホームページに招聘状の内容について記載があります。参考にして作成してください。

参考) 中国査証申請服務中心(中国ビザ申請センター) https://www.visaforchina.cn/TYO2_JP/generalinformation/visaknowledge/281010.shtml

Zビザと同様に、中国ビザ申請センターのホームページから、高速→査証→オンラインによる申請表入力のページを開いて、申請表に入力、プリントアウトして署名したビザ申請書を準備します。

なお、18歳未満のお子さんを帯同させる場合、ビザ申請に両親の署名が必要になります。家族が後追いで入国する場合は「父親/母親は、中国赴任中のため署名できません」という説明書が必要になりますので注意してください。

中国ビザ申請センターへは、オンラインから予約を行ったうえで、上記の書類を持参してビザ発給申請を行います。

5. 中国入国後に行うビザに関する手続き

Zビザは、一時入国用の就労ビザなので、入国後に外国人工作許可証と、外国人居留許可を取得する必要があります。同様に、S1ビザにも必要な手続きがあります。

5-1. 外国人工作許可証の申請

Zビザ取得者は、中国入国後15日以内に、「外国人工作許可証」を取得する必要があります。外国人工作許可通知を元に、勤務先と労働契約を締結し、管轄内の人力資源・社会保障行政部門に外国人工作許可証の申請を行います。

申請には、申請者のパスポート、外国人工作許可通知、雇用契約書(原本が中国語以外の場合は、中国語に翻訳したもの)などが必要です。必要な書類は所轄の機関に確認してください。

外国人就業証の取得には約2週間かかります。

5-2. 外国人居留許可の申請

外国人就業証の取得後に「外国人居留許可」の申請を行います。こちらはS1ビザ取得者も必要な手続きです。

申請には、パスポート、外国人工作許可通知、写真、宿泊登記証明書などが必要です。必要な書類は所轄の期間に確認してください。帯同者の場合、親族関係を証明する書類も必要になります。

外国人居留許可は、中国入国後30日以内に居住地の公安局に申請を行います。こちらの申請を行わずに中国に30日以上滞在するとオーバーステイとなり、罰金を課されますので注意してください。

6. まとめ

いかがでしたか?本稿では、ビザ取得までの流れと用意すべき書類についてご紹介しました。

中国就労予定者が取得すべきビザの名称は「Zビザ」です。ビザ取得の前に必要になるのが「外国人工作許可通知」です。

外国人工作許可通知取得は、以下の流れです。

  1. 外国人工作許可通知取得に必要な書類を集める
  2. (1) の書類を現地勤務先へ送付する
  3. 外国人工作許可通知を受け取る

外国人工作許可通知取得に必要な書類は下記の通りです。

  • パスポートのコピー
  • 卒業証明書(公印確認・領事認証が必要)
  • 履歴証明書
  • 派遣任命書
  • 証明写真
  • 外国人体格検査記録(公印確認が必要)
  • 犯罪履歴証明書(公印確認・領事認証が必要)

外国人工作許可通知を取得した後、ビザ発行申請が可能となります。

ビザ取得に必要な書類は下記です。

  • パスポートの原本及び写し
  • 証明写真
  • 中華人民共和国査証申請表(ビザ申請書)
  • 外国人工作許可通知

上記の申請書類を中国ビザ申請サービスセンターに提出します。ビザ自体は約1週間程度で発行されますが、外国人工作許可通知取得手続きにかかる時間を含めると、ビザが手元に届くまでには2〜3カ月程度かかります。

家族が取得するビザの名称は「S1ビザ」です。S1ビザ取得に必要な書類は下記の通りです。

  • パスポートの原本及び写し
  • 証明写真
  • 中華人民共和国査証申請表 (ビザ申請書)
  • 中国国内に居留する親族(赴任者本人)からの招聘状
  • 招聘者の外国人工作許可通知のコピー
  • 招聘者のパスポートと居留証のコピー 
  • 戸籍謄本(3カ月以内に発行されたもの。公印確認・領事認証が必要)
  • 居留許可を申請する旨の誓約書

Zビザ取得者は中国入国後2週間以内に、「外国人工作許可証」を取得する必要があります。その後、「外国人居留許可」取得申請を行います。外国人居留許可はS1ビザ取得者も必要となります。

ビザを取得するまでには様々な書類を用意し、複数の手続きを踏まなければなりません。この記事で、取得までの流れと必要な書類を可視化したことで、ビザ取得に関する負担が軽くなればと思います。

  • 中国査証申請服務中心, https://www.visaforchina.cn/TYO2_JP/index.shtml(閲覧日2023年8月3日)
  • JETRO「就業・就労ビザの種類とその取得方法:中国」,『JETRO日本貿易振興機構』, https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010934.html(閲覧日2023年8月3日)

[i] JETRO「就労許可新制度の特徴を詳しく解説-外国人就労に関わるセミナー開催(1)」https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/12/40a97f656a712233.html,2016年12月8日(閲覧日2023年8月15日)

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