「環境的に単身が厳しい国だと思ったから、夫を支えてあげたいと思った。」
これは、中国に赴任する夫と共に、駐在員の妻として中国で暮らそうと決めた、ある妻の声です[1]。このような気持ちで慣れない海外赴任生活を支えるため、家族が赴任先に一緒に来てくれるなら、本当に心強いですよね。
駐在員の妻を対象にした調査によると、妻が夫の海外赴任に帯同すると決めた理由で最も多いのは「家族で一緒に暮らしたいから」というもので、全体の42%を占めています[2]。家族が一緒に過ごせる生活を守るために、日本での生活をいったんストップしてでも、馴れない海外生活にチャレンジしようとする姿勢が見て取れます。
しかし、帯同する家族、特に妻には、中国で生活を送るにあたって想像以上の負担がかかるということを知っておかねばなりません。
駐在員の妻は、一般的に「駐在妻」「駐妻(ちゅうつま)」と呼ばれています。この駐在妻としての生活は、悩みや苦労が絶えません。
「家族みんなで一緒にいたい」、そう思って帯同してくれた家族の思いを大切にするためにも、中国の駐在妻について知り、赴任者自身も家族の中国生活を支えていく姿勢を持つことが大切です。
本稿では中国の駐在妻たちの苦労や悩みを紹介します。また、実際に中国で生活したことのある駐在妻2名のインタビューや、駐在妻の具体的なケア方法も紹介しています。
ぜひ、中国へ赴任する前に駐在妻の実態を知り、家族が楽しいと思える駐在生活を送れるよう、参考にしてください。
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[1] 山水 由里絵「【駐妻白書2020】転勤先は中国?夫の職業は商社?駐在妻72人の実情を大公開!」,『 CLASSY.オフィシャルサイト「CLASSY.ONLINE」』,2020年3月30日,https://classy-online.jp/lifestyle/71934/ (閲覧日2021年8月17日)
[2] 山水 由里絵「【駐妻白書2020】転勤先は中国?夫の職業は商社?駐在妻72人の実情を大公開!」(脚注1と同)
目次
1. 中国赴任前から始まる駐在妻の悩みや苦労!パートナーとして知っておきたいポイント
中国赴任が決まったその日から、準備のため大忙しの日々が始まります。赴任者として、業務上の手続きや引継ぎなどに追われることでしょう。
その一方で、妻は自身のキャリアの再考、家族のビザ取得、引っ越し手続き、子供の学校探しなどの準備に追われています。駐在妻の生活は赴任前から始まっているといっても過言ではありません。
本章では、駐在妻が赴任前から抱える悩みや苦労を解説します。妻の悩みや苦労を知ることも赴任準備の一環として捉え、理解することで、よりスムーズに駐在生活をスタートさせることができるでしょう。
1-1. 駐在妻自分のキャリアやライフプランの再考
海外赴任に帯同することは、妻のキャリアに大きな影響を与えます。実際に、夫に帯同するかどうかを悩む理由のひとつに「キャリアがストップしてしまう」という悩みが挙げられます。
駐在妻の多くは、取得できるビザの関係で就業できない場合が多いことや、家族のサポートを一手に引き受けるために専業主婦となります。
そのため夫の海外赴任に帯同することは、退職もしくは休職とイコールになるのです。
自分自身を妻の立場に置き換えて考えてみてください。長年積み上げてきたキャリアを中断することは苦渋の決断であるはずです。
また、妊娠・出産を考える女性にとってもライフプランが大きく変わることになります。海外での妊娠・出産は不安が大きいため、子供を持つタイミングを再考する場合もあるでしょう。
仕事とプライベートの両面の見通しが大きく変わるため、夫の海外赴任に帯同するか否かは、駐在妻が最初に抱える悩みと言えるでしょう。
1-2. ビザ取得
ビザ発行の手続き自体は勤務先が代行してくれる場合もありますが、手続きに必要な書類は自身で用意する場合が多いでしょう。
ビザを発行するためには多くの書類を用意しなければなりません。中国へ赴任する駐在員の家族は「S1ビザ」を取得する必要があります。
S1ビザ取得のために必要な書類は下記の通りです。
・パスポートの原本及び写し(余白が2ページ以上あり、6ヵ月以上の残存有効期間があるもの)
・6ヵ月以内に撮影した証明写真 1枚
・中国査証申請用紙
・中国国内に居留する親族からの招聘状
・招聘者の外国人工作許可通知のコピー
・招聘者のパスポートと居留証のコピー
・戸籍謄本(3ヵ月以内に発行されたもの)
「招聘者」とは赴任する本人を指します。上記の通り、赴任者本人に関連する書類もあるため、まずは赴任者のビザ取得が最優先となります。
赴任者のビザ取得には、帯同する家族よりも多くの書類が必要となります。赴任者が取得すべきZビザは、下記の書類を準備する必要があります。
・パスポート
・証明写真
・中華人民協和査証申請書
・外国人工作許可通知(取得には次の書類が必要:パスポートのコピー、卒業証明書、履歴証明書、派遣任命書や中国での勤務先との雇用契約書、写真、外国人体格検査記録、犯罪履歴証明書)
このように準備する書類は多岐にわたります。書類の準備には手間と時間がかかるものなので、家族総出で取り組まなければなりません。
1-3. 引っ越し手続き
海外への引っ越しは想像以上の手間と苦労がかかります。国内での引っ越しであれば、輸送する荷物に制限はありません。ですが、中国への引っ越しとなると、税関審査があるため、輸送する荷物に多くの制限が設けられています。
また、日本国内での引っ越しの場合は、入居と同時に荷物が到着するのが普通です。しかし中国へ荷物を送る際は、荷物の量や大きさ、重要度にあわせて、手持ち・航空便・船便と輸送方法が分かれるのが通常です。
それぞれ輸送にかかる時間が違うので、荷物がすべて揃うのは赴任してから数カ後ということが多々あります。
持ち込む荷物の制限や規則を確認しつつ、荷物の輸送方法を検討し到着する時期のずれを考える。これらを気にしながら引っ越し準備をすることはとても大変です。
加えて、引っ越しに伴い、現在住んでいる家や家具をどうするかという問題も浮上します。持ち家の場合は家具を置いていけますが、賃貸の場合は家具をレンタルルームなどに預けなければなりません。
中国への引っ越しは、赴任に関する準備の中で最も大きな負担となると言っても過言ではありません。
1-4. 幼稚園・学校探し
お子さんがいるご家庭なら、子供の通園・通学先を決めなくてはなりません。
お子さんが未就学児の場合は「日系幼稚園」「地元の幼稚園」「インターナショナルスクール付属の幼稚園」の3種類が主流です。
日系幼稚園は職員・園児共に日本人が多く、日本の幼稚園に近いとされています。地元の幼稚園は現地の子供が通っている園です。インターナショナルスクール付属の幼稚園は、さまざまな国籍・人種の子供が通っています。
お子さんが小学生以上の場合は「日本人学校」「インターナショナルスクール」のどちらかを選んで通学する場合が多いようです。
日本人学校とは、日本の文部科学省が管轄する教育機関です。日本国外に居住する子供たちが日本国内の小・中学校と同等の教育を受けられると認定された、全日制の教育機関となります。
そのため、日本人学校の中学部を卒業した生徒は日本国内の高等学校の入学資格を、高等部卒業の生徒は国内大学の入学資格を得ることができます。
一方、インターナショナルスクールとは別名「国際学校」とも呼ばれます。現地に住む外国人の子供を対象にした教育機関で、様々な国籍の子供と一緒に学べるのが特徴です。ただし教育指導内容は各学校に委ねられているため、日本と同じ内容・水準で教育が受けられない場合があります。
学校によって異なるのは教育指導内容だけではありません。学費や送迎サービスなど、各学校によって異なる点が多々あります。
お子さんにとってベストな教育機関を選択するためにも、妻任せにせず、赴任前から現地の教育機関の情報を集めておきましょう。
2. いざ現地へ!中国で駐在妻となってからの苦労と悩み
様々な準備を終え、いよいよ中国で駐在妻としての生活が本格的に始まります。赴任前から始まっている駐在妻生活ですが、これまで以上に苦労と悩みが付きまといます。
「きっと中国に行ったら色々大変なんだろうな」という曖昧な認識ではなく、赴任者の妻が抱える可能性の高い苦労と悩みをしっかり認識しましょう。
2-1. 生活の基盤を作ることの大変さ
生活の基盤を作ることは、住居の中を整えることだけではありません。徒歩圏内のスーパーや薬局、病院や子供の遊び場などを把握し、日常生活を送る上で欠かせない情報を集めてインプットすることも含まれます。
この基盤作りを外国で行うのは想像以上に大変なものです。日本国内での引っ越しであれば、どの土地も大体駅前に店が集まっていて、売っているものも慣れ親しんだものばかりです。ネットスーパーやウーバーイーツなどの宅配サービスも当たり前に日本語で使うことができます。
病院も子供の遊び場も、同じ日本にあるため一定の基準を満たしており、自分に合うか合わないかで選ぶことができます。
ですが慣れない土地、中国だとそうはいきません。徒歩圏内にスーパーがなければ、タクシーや地下鉄を使って行かなければなりません。中国語が話せなければ、タクシーに乗る際に、行先を運転手に伝えるのも一苦労です。
さらに中国ではキャッシュレス決済が主流なので、その決済方法に慣れずに苦労することもあるようです。
やっとスーパーに着いても、見慣れない食材や調味料が多いので、どれを買えばどんな料理が作れるのか、その判断も難しいことでしょう。慣れ親しんだ日本食が食べたくても、難しい場合が多いようです。
さらには病院や子供の遊び場探しなども、日本とは環境が異なるためとても難しくなります。
まずは、病院探しについて説明しましょう。中国の都市部には外国人向けの病院もあり、日本人医師の診察を受けることができたり、医療通訳のサポートを受けることが可能です。
しかし、外国人向けの病院が近くにない場合は、地域の病院を探さなければなりません。外国で不自由な言語を使って受診することは大変です。また、正しく診察してもらえているかという不安もあるでしょう。診察代金も高額になる可能性があります。
このような場合への対応策として、海外赴任者用の保険や現地の医療保険に加入することが挙げられます。一定の金額以内であれば診察代金がカバーされるほか、近くの病院の紹介を受けられることもあります。
海外赴任者用保険や中国の医療事情については下記を参考にしてください。
次に、子供の遊び場探しです。中国では、子供が遊べる公園が少ない地域もあるようです[3]。また、日本でいう児童館なども少ないようです[4]。
ショッピングモール内に子供の遊び場が設置されていることもあるようですが、言語に不安があると慣れない場所へ行くのは大変です。
こうした日本との環境の違いから、生活の基盤を整えるのに数カ月かかる場合もあるようです。
2-2. 現地の日本人コミュニティーへ入る難しさ
先ほどご紹介した、「生活の基盤を作る大変さ」の解消方法として、「他の駐在妻から情報を集める」という方法があります。
中国は多くの日本人ビジネスパーソンが赴任している土地です[5]。そのため、駐在妻が参加できるコミュニティーが多々存在しています[6]。こういったコミュニティーは中国で快適に暮らすための情報交換の場として、非常に重要なものです。
ただし、こうしたコミュニティーは自分自身で見つけ、入っていかなければなりません。
同じマンションに住んでいたり、子供の就学先が一緒の日本人の駐在妻、習い事で一緒になった駐在妻など、日本人に出会える可能性はゼロではありません。ですが、慣れない土地での生活により精神的な余裕がない場合、人によっては、新しいコミュニティーへ入って人間関係を構築することはとても難しくなります。
そういった場合は、赴任者本人が、勤務先が用意してくれる海外赴任者の集まりなどに積極的に参加し、他の駐在員や駐在妻から情報を得ることが大切です。
赴任者には「赴任先の勤務地」というコミュニティーがあらかじめ用意されていますが、駐在妻には何も用意されていません。赴任者本人には、妻や家族が新しいコミュニティーへ入る橋渡し的な役割を担う必要があるでしょう。
2-3. 駐在妻を襲う孤独は想像以上に深刻
赴任前から「住み慣れた日本を離れて、中国で暮らすと寂しいのだろうな」ということはわかっていたつもりでも、いざ実際に中国で暮らし始めてみるとその孤独感は想像以上だった、という場合が多いようです。
「駐在妻の多くは、取得できるビザの関係で就業できない場合が多い」ため、ほとんどが専業主婦になるとご紹介しました。
日本にいた頃は仕事をしていたので張り合いのある日々を送ってきたものの、「中国へ来てからはやることがない」と無気力になってしまう駐在妻もいるようです。
また、家族で一緒にいたいと思って帯同してきたのに、肝心の夫は仕事でいつもいないとなると、「何のために中国へ来たのか?」と自分の存在意義を見失ってしまう場合もあります。
駐在妻の中には、中国へ来てからすぐに語学学校へ通ったり、趣味を見つけてその教室へ通ってみたりとアクティブに過ごす方もいます。
また、自身の駐在妻としての生活をSNSで紹介する方もいます。そういう方の日常を垣間見ると、華やかで楽しそうに見えるでしょう。
しかし、実際はそうではない方もいます。誰もが前向きな気持ちで駐在妻生活を送れるわけではありません。
赴任者は、妻が抱える孤独感は想像以上だということを理解することが必要です。そして、その孤独を分かち合うことのできる、唯一の人間が赴任者自身だということを自覚することで、駐在妻の孤独感を和らげることができるでしょう。
[3] さやさん, 「中国駐在生活の不満|日本との違い|子連れ家族で住んでみて感じる嫌なこと」, 『さやほたブログ』2019年9月30日, https://sayahota.com/discontent_in_china/(閲覧日2021年10月1日)
[4] 成守萌, 「【実体験】日本とはこんなに違う!中国の子育て環境」, 『中国語学習コラム』2021年2月14日, https://chinese-coaching.jp/5693/#i-10(閲覧日2021年10月1日)
[5] 山水 由里絵「【駐妻白書2020】転勤先は中国?夫の職業は商社?駐在妻72人の実情を大公開!」, 『CLASSY.オフィシャルサイト「CLASSY.ONLINE」』2020年3月30日, https://classy-online.jp/lifestyle/71934/(閲覧日2021年9月2日)
[6] SAORI「中国上海にいる太太とは?駐在妻の暮らしは十人十色✮✭✯」,『もろGLOBAL LIFE。」, https://mylife-myhappiness.com/archives/1043(閲覧日2021年9月2日)
3. 中国の駐在妻の実際の声を聞いてみよう!2名の駐在妻インタビュー
今回この記事を作成するにあたり、実際に北京・上海で駐在妻として生活していたJさん、現在も上海で駐在妻として生活するKさんに、お話を伺うことができました。
ぜひ、駐在妻の実際の声を聞いて今後の中国生活の参考にしてください。
3-1. インタビュー1:北京・上海に約6年住んでいたJさん
まずは、北京と上海で合計6年駐在妻として生活されたJさんの声を紹介します。Jさんは北京と上海の2都市での生活を経験されているので、それぞれの都市の特徴も知ることができます。また小さなお子様連れの方には特に参考になる内容です。ぜひご一読ください。
Jさんのプロフィール
- 職業 ウェブデザイナー
- 中国在住期間 2015年3月~2020年7月
- 在住都市 北京(2年)上海(約4年)
- 中国へ行くきっかけ ご主人の中国赴任に伴う帯同
- 当時の家族構成 ご主人・Jさん・お子様(赴任時は生後半年)
3-1-1. 中国に行く前に不安だったのは、「言葉・食べもの・友達づくり」
一番不安だったのは、言葉の問題です。英語は話せますが、中国語は話せなかったので、言葉の問題が不安でした。
他には、子供が当時生後6カ月ということもあり、安全で質の良い食べ物を買えるのかが心配でした。
また、中国でどうやって友人を作ったら良いかもわからず、不安でしたね。
3-1-2. 中国へ行ってから大変だったことは、「言葉・外出禁止令・日本人への厳しい目線」
最初に住んでいた北京では、言葉の問題に悩まされました。タクシーの運転手やスーパーの店員、マンションの守衛など、日常生活を送る上で関わりが欠かせない人たちに言葉が通じず、苦労しました。場合によっては、紙に書いて意思疎通を行いました。
北京では、行事による外出禁止を突然求められたので、事前の食糧確保などに苦労しました。外出禁止の掲示物も読めず、このような場合も言語で悩みました。
地域によると思いますが、以前の北京では、日本人への風当たりが若干強かったので、子連れということもあり少し緊張しました。
3-1-3. 中国に行ってから楽しいと思えたことは、「グローバルな出会い・新たな趣味」
北京は上海の3分の1ほどしか駐在員がおらず、コミュニティーが小さかったため、日本人のコミュニティーに参加しやすかったです。また、さまざまな出身地の人たちで集まる会が多く、中国人を含めた世界各国の友人ができました。
大使館の案内やフリーペーパーを通じてコミュニティーへ参加したのですが、そこでは英語を活かすことができました。そこで出会ったママ友達とは、今も交流が続いています。
また、趣味で中国結びを習っていたのですが、それがとても楽しかったです。習い事仲間や、習い事の先生を通じて、友人ができました。
3-1-4. 中国での生活を楽しむ工夫は、「ひきこもらないこと・SNSで自身の生活を発信」
言葉が通じないことで引きこもってしまう方も多いと思いますが、友人を作ったり習い事をしたりして、早めに外へ出ることが大切だと思います。特に日本語ができる中国人の友人を見つけると、中国での生活はとても楽しいものになりますよ。
SNSで楽しいことを発信し、「私って人ができないことやっていて楽しい」と自分で自分を励ますなど、自己満足でもよいので前向きになることが大切だと思います。マーケット(さまざまな国の人たちが、自分の国のものを売る)は楽しいので、ぜひ積極的な参加をお勧めします。外へ出るきっかけにもなりますよ。
マーケットの情報はフリーペーパーで調べることができます。
3-1-5. 中国で生活する上でパートナーに求めることは、「積極的に話を聞くこと」
週に1回でいいので、パートナーにはじっくりと話を聞く機会を設けてほしいと思います。人間関係のこと、気候や体調、生活する上で不満がないかなど、さまざまなことを聞いて気にかけて欲しいです。特に女性は、「話すだけで楽になる」ものです。お互いに上手にフォローすることが大切だと思います。
3-2. インタビュー2:上海にお住いのKさん
続いて、現在も駐在妻として上海にお住いのKさんの声をご紹介します。慣れない土地での葛藤を経て、ご自身の力で楽しい中国生活を確立されたKさんのお話は、これから中国で生活する上で参考になるはずですよ。
Kさんのプロフィール
- 職業 イラストレーター
- 中国在住期間 2017年~現在
- 在住都市 上海(4年目)
- 中国へ行くきっかけ ご主人の仕事の関係で帯同
- 当時の家族構成 ご主人・Kさん
3-1-1. 中国に行く前に不安だったことは、「居住環境と食べ物」
インテリアが好きなので、中国で住む家も好みのインテリアを揃えられるか不安でした。大気汚染も心配でした。
また、食べ物が口に合うかも不安でした。
中国での生活に備えて何を持っていけばよいのかよくわからなかった点も不安でしたね。
3-2-2. 中国に行ってから大変だったことは、やはり「言葉の問題」
とにかく言葉が通じず苦労しました。タクシーを呼ぶことも、住む部屋でトラブルが起きた時も、スマートフォンを盗難されたときも、中国語でうまく意思疎通ができずに苦労しました。中国語はある程度勉強してから行く方がよいと思います。
言語の問題には頭を悩まされましたが、それ以外で困ったことはあまりありません。食べ物もとてもおいしいです。
3-2-3. 中国に行ってから楽しいと思えたことは、「交友関係の広がりと新たな趣味」
これまで人付き合いが多い方ではなかったのですが、中国では色々な人に出会えるのがいいなと思いました。また、日本語を話せる中国人が多いことに驚きました。そういう方は日本のことが好きなので、仲良くなりやすいです。
上海では、個人経営やチェーン店のカフェがここ4、5年で増えた印象です。とてもおしゃれなカフェが多く、カフェ巡りをすることが好きになりました。
3-2-4. 中国での生活を楽しむ秘訣は、「現地ならではのお仕事&習い事」
上海に来た1年目は友人もおらず、家で動画を見てばかりでした。ですが、せっかく上海に来たので、上海のさまざまなことを知りたいと思っていました。そこで、上海に関する取材付きの漫画を描くことにし、出版社へ売り込みに行きました。その結果、連載をいただくことができ、取材メインの日々が始まりました。それからは楽しい日々を送れています。
上海に来たことを「チャンス」と捉えて、日本にいた時には習うことが難しかったドラムとボイストレーニングの習い事を始めました。ただ、こうした習い事は情報誌に掲載されていなかったため、人づてに聞いて探しました。上海市内はそれほど広くなく、町の中心部によく行く場所が固まっているため、レッスンに通いやすいと思いますよ。
3-2-5. 中国で生活する上でパートナーに求めることは、「奥さんの孤独を気遣うこと」
中国に行ったばかりのときは、親しい友人もおらず孤独でした。強い孤独感からか、語学勉強をする気力もなく、パートナーが帰ってくる夜までずっと動画を見ている日々でした。
中国では言葉も通じず、トラブルも解決できず、奥さんたちは本当に孤独です。
パートナーにはそのような奥さんの孤独を気遣って、奥さん同士を紹介したりして、友人作りに協力してくれるといいなと思います。
以上が、お二人のインタビュー内容となります。
お二人のお話から、駐在妻の苦労や不安をより身近に感じられたのではないのでしょうか。
言葉が通じないことの苦労は、より深い孤独感につながる印象を受けました。駐在妻も、赴任前や赴任後に、少しでも中国語を身に付けておくと、なんらか孤独の解決につながるかもしれません。
また、趣味や習い事、コミュニティーへの参加も、孤独を和らげ前向きに生活を送るための良い方法のようですね。
最も強く印象に残ったのは、お二人ともパートナーに「話を聞いてもらうこと」を求めていた、ということです。駐在妻にとって、パートナーは家族であると同時にただ一人の友人であり、相談相手となります。
駐在妻の孤独を和らげ、前向きにさせるのはやはりパートナーだと再認識させられる、興味深いお話でした。
4. 中国ビジネス成功の秘訣は駐在妻へのケアにあり!効果的に行うコツ
中国でビジネスを成功させるには、家族の協力が不可欠です。その家族は自身のコンディションが万全でないと、赴任者のサポートを十分に行うことはできません。
つまり、中国でのビジネス成功のコツは、駐在妻を大切にする、ということです。本章では、その効果的なケア方法を解説します。
4-1. 駐在妻の抱える孤独の大きさを理解しよう
駐在妻の抱える孤独は、前章でご紹介した通り大きなものです。赴任者は勤務先に行けば話す相手がおり、やるべき仕事があります。
しかし、駐在妻にはパートナー以外に話す相手がおらず、仕事もしていないためやるべきことも見当たらず、中国で過ごす日々を途方に暮れたまま過ごすことになりがちです。
そんな駐在妻に寄り添えるのは、同じ境遇にいるパートナーだけです。先ほどご紹介したJさんとKさんのインタビュー内容にもあったように、駐在妻は「パートナーには話を聞いてほしい・寄り添ってほしい」と思っています。
ただし、話を聞く際に注意してほしい点が1点あります。妻に「今日は何してたの?」と聞くのはやめたほうがよい、ということです。
特に中国に赴任して間もない頃、まだ生活の基盤が確立しておらず、親しい友人もいない頃に「今日は何してたの?」と聞くことは、駐在妻を追い詰めてしまうかもしれません。
ある駐在妻は「今日何してたの?」と夫に聞かれたことが苦痛だったと言います[7]。「夫は仕事をしているのに、今日私は語学を学んだ。そんな子供みたいなことしかできていない」と劣等感を感じてしまったといいます。
「今日もお疲れ様。何かトラブルはなかった?」など、日中駐在妻がどのように過ごしていたかを想像して話を聞くことが大切です。
4-2. お互いが抱えているストレスや問題をオープンに話し合おう
ここまで、駐在妻の苦労や孤独にばかり焦点を当ててきました。ですが、赴任者も中国赴任にあたり大きなストレスを抱えることになるでしょう。
言語での意思疎通が難しく思うように業務が進まない、日本とは違う業務の進め方で困惑してしまったなど、駐在妻とは違うストレスや孤独を感じると思います。
そんなストレスや孤独を、「パートナーだって我慢している」「パートナーの話を聞かないと」などと考え、自身のことを後回しにしてしまうことは避け、できるだけ自身のストレスや孤独を駐在妻に伝えるようにしましょう。
駐在妻から見た赴任者は、「仕事先で話す相手があっていいな」「仕事というやるべきことがあっていいな」など、中国で生き生きと暮らしているように見える場合があります。
また、会食や接待などで家を空けがちな場合、駐在妻はより孤独を深め、パートナーに対して良くない感情を持ってしまう場合があります。
駐在妻から見た赴任者、赴任者から見た駐在妻は、それぞれ実態とかけ離れていることがあります。そんなギャップを埋めるためにも、より細かく密にコミュニケーションを取り合う必要があります。
抱えるストレスや問題の中身は違っても、お互いが同じように悩んでいると理解し、お互いのことをもっとオープンに話すことが大切です。
そうすることで「お互い頑張っているのだな」「支えあっていこう」と思え、より相手の存在を大切に思うことができるでしょう。
4-3. 駐在生活でしか味わえない楽しみを見つけよう
駐在生活は大変なことも多いですが、貴重な経験でもあります。駐在生活でしか味わえない楽しみを見つけると、より充実した日々を送れるでしょう。
駐在生活の楽しみの一つは、中国語を深く学べることではないでしょうか。日本でいくら中国語を学んでも、実際に現地で中国語を使って生活することにはかないません。駐在妻生活を送ることで、日本語以外の言語をしっかり身に付けられるよい機会にもなります。
中国語をしっかり身に付けることで、帰国後のキャリアが広がるかもしれませんし、今後の人生に新たな展開があるかもしれません。外国語を身に付けると、今後の人生の大きな発展に結びつく可能性があるのです。
また、先ほどご紹介したKさんのインタビュー内容にもありましたが、習い事も駐在生活の楽しみの一つです。日本だと習うことが難しかったことも、中国でなら習えることもあるでしょう。
中国の歴史を学び、所縁のある土地を尋ねることもおすすめです。ロマンある中国の歴史を肌で感じることができるのは、駐在生活ならではの楽しみです。
異国の言語や文化、それらを家族全員で学び感じることは駐在生活の大きな楽しみであり、また大切な思い出となるでしょう。
[7] Bluebird「 [海外駐在妻]駐妻の悩み、駐在初期につらかったこと5つ。乗り越えた今だからわかること」,『Bluebird Story」, https://bluebird-story.com/expatswife-toughtime/(閲覧日2021年9月7日)
5. まとめ
今回は駐在妻について解説しました。赴任者を支える、大切な役割を担う駐在妻について深く理解し共感することは、中国でのビジネス成功に欠かせないことです。
赴任前から始まる駐在妻の苦労と悩みには下記のようなものがあります。
・自分のキャリアやライフプランの再考
・ビザ取得
・引っ越し手続き
・幼稚園・学校探し
中国に赴任してから抱える駐在妻の苦労や悩みには下記のようなものがあります。
・生活の基盤を作ることの大変さ
・現地の日本人コミュニティーへ入る難しさ
・想像以上に深刻な孤独
中国でのビジネス成功に欠かせないのは駐在妻のケアです。ケアする際のポイントは下記です。
・駐在妻の抱える孤独の大きさを理解する
・お互いが抱えているストレスや問題をオープンに話し合う
・駐在生活でしか味わえない楽しみを見つける
「家族で一緒にいたい」、そう思って中国赴任に帯同してくれた妻や家族を大切にすることは、駐在生活をより豊かにしてくれるでしょう。
ぜひ本稿を参考に、より実りある駐在生活を家族みんなで送ってくださいね。
- 山水 由里絵「【駐妻白書2020】転勤先は中国?夫の職業は商社?駐在妻72人の実情を大公開!」, 『CLASSY.ONLINE』,2020年3月30日, https://classy-online.jp/lifestyle/71934/(閲覧日2021年8月17日)
- 文部科学省「在外教育施設の概要」, https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/002.htm(閲覧日2021年10月11日)
- 外務省「海外教育・年金・保険・運転免許・犯罪被害」,https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/kaigai/kyoiku/index.html(閲覧日2021年10月11日)
- Jinjin「駐在妻って何してるの?〜中国在住アラサー子無し駐妻の場合〜」,『中国駐在員妻jinjinの気まぐれブログ〜北京⇄上海〜』, https://ameblo.jp/najinxi/entry-12691340776.html(閲覧日:2021年10月11日)
- Lama「【中国駐在が決まったら読みたい】家族で来ることをおすすめする5つの理由】,『 Life with spices』, https://lama-ai.com/aboutlama-china/ (閲覧日:2021年10月11日)
- SAORI「中国上海にいる太太とは?駐在妻の暮らしは十人十色✮✭✯】,『もろGLOBAL LIFE。』, https://mylife-myhappiness.com/archives/1043(閲覧日2021年10月11日)
- あっきー「【駐在妻のはじめ方】移住後2ヶ月は生活基盤を整える時と考えるべし!」,『ダイダイとライオン』, https://akko-works.com/weddingpre/china-5month-life/(閲覧日2021年10月11日)
- みくり「北京駐在帯同して良かった3つのこと<駐在妻レポート>」,『中国駐在準備|海外赴任/駐在の英会話』, https://kaigai-taido.com/beijing-chuzai-merits/ (閲覧日2021年10月11日)